なんも考えてないんですよねー。なんか思い描いておかないと、やばいですかねー(笑)
― 志ん八さんの(落語のもととなる、お笑いの)センス・持ち前の明るさなどは、幼少期~青年期、どのようなこと(環境?家庭?)で培われたのでしょうか
小学生の時の僕の特技が「瞬時におならが出せる」だったんです。友達がカウントダウンしてくれるんですよ「3、2、1」って、で、それに合わせて「ぶ!」って。そうするとみんな笑ってくれるんですよね。それが気持ちよくて。そういうことがきっかけですかね。あと、中学の頃、自習の時間の一時間をいろんな先生の物まねを一人でやって埋めたことがあります。
― 今月から始まる『2017志ん八祭』~志ん五襲名直前・連続独演会~をやろうと思ったきっかけ、意気込み、このお祭り(落語会)にかける思いなどを教えてください。
もともとやっていた、らくごカフェでの独演会「志ん八印」がキャパオーバーになってきちゃったのと、この時期なので、やってみようかなと。全3回公演にしたので僕の好きな兄さん・師匠がたをお呼びしました。3人を選ぶのに苦労しました。呼びたい人もっと他にもいますので。天どん兄さんもその一人。兄さんには「志ん八印」には何度もゲストで来ていただいてたので、言われましたよ。「なんで(今回のゲストには)俺が入ってないんだよー、なんだよー」って(苦笑)。
― これから考えていることは?仕掛けやビジョン、覚えたいネタ、今年やろうと思っていることなど。教えてください。
なんも考えてないんですよねー。なんか思い描いておかないと、やばいですかねー(笑)。ある先輩に「ぼんやりしてて、大丈夫か?」って心配されまして。まぁ、徐々に準備は進めてるんですけどね。
― テレビやラジオなどへのご出演が多いですが。
ありがたいことです。J:COMチャンネル(地デジ11ch)の地元密着番組「ちょっ蔵お出かけ!まちかど情報局」では、 川越出身の落語家「八っちゃん」として、川越大好きアナ「みかねぇ」とともに、レポーターとして川越地域の皆さんとふれあいながら楽しくにぎやかにお送りしています。ラジオもいくつか出させていただいてます。楽しいですよねラジオ。
編集部注)志ん五昇進後、このレポーターのお仕事をどうなさるのか。さらに、呼び名の「八っちゃん」がどう変わるのか、はたまた変わらないのかについては聞き漏らしてしまいました!(しくじった…)
― TEN(※)は夏に解散してしまいますね。
はい。みんな(続々と真打に)上がっちゃいますしね。解散と言うか、発展的解消と言うか。これからは独り立ちして、いつか、みんなで真打として同じ高座に上がれたらいいねとは話し合っています。これまで、ときん師匠(元・時松兄さん※)が一切の事務方をやってくださいまして、もう何から何まで。そのおかげでここまで続けられたという感じです。連絡から、酒の調達から、もう一切合財。ありがたいことです。馬るこ兄さん(鈴々舎馬るこ)は物販部長としてですね、頑張っていただいて。楽しいユニットでした。
※ TEN::落語協会で2003年楽屋入りした同期10人組の落語ユニット。古今亭文菊、柳家小八、三遊亭ときん、鈴々舎馬るこ、桂三木男、柳亭こみち(第6回くがらく出演)、古今亭志ん八、古今亭駒次(第8回くがらく出演)、柳家さん若(第10回くがらく出演)、柳家花ん謝。
※ 三遊亭ときん:三遊亭金時師匠のお弟子さん。二ツ目までの名前は「時松」。真打に昇進して、ときん。大田文化の森で『おおもり落語会』を開催中(三遊亭歌太郎さんと柳亭市江さんとともに)
※ 鈴々舎馬るこ:鈴々舎馬風師匠のお弟子さん。爆笑古典改作派。落語家前に様々な経歴を持ち、セルフプロデュース力が抜群。
そうそう、思い出しました。師匠が倒れる前に教わってた噺があって、その後結局、上げてもらってない噺があるんですよ。
― 思い切って伺いますが、志ん五師匠が闘病中のお話というのは…
倒れたと連絡を受けて駆け付けた時は今日明日と言われてました。その後、大きな病院に移り、延命処置を施していただいてからは半年もちまして。その間、寄席にも出れましたし、独演会も開けましたので、それはそれでよかったかなと。その間は弟子が交代で病院に寝泊まりしてました。そうそう、思い出しました。師匠が倒れる前に教わってた噺があって、その後結局、上げてもらってない噺があるんですよ。
― なんですか?
「錦の袈裟(※)」です。おかみさんは「ベッドの横で、お父さん(志ん五師匠)に聞かせて、上げてもらえばいいじゃない」っておっしゃってくれたんですが、やめときました。それは今後やりたいですね。
※ 「錦の袈裟」:与太郎が花魁にもてるという珍しい?ストーリー。吉原に繰り込もうとする若者たちが、みんなで豪華な錦の褌を締めて洒落こもうとする。仲間の一人の与太郎はと言うと…。
― それが最後に
そうです。それが最後に(志ん五)師匠に教わった噺ですね。だから、まだ一度もやってなくてですね。
― 今回(真打昇進襲名披露興行)のような特別な時じゃないとなかなか…
はい。そうですね。ずっと寝かせ過ぎたってのもありますけどね。結果、特別な思い入れのある噺になってしまいました。
― 志ん五師匠のおかみさんは習字の先生なんですよね
はい。僕も見習いの時に習っていました。たまに字が上手いと言っていただけるのは、おかみさんのおかげです。
今回、お願いしましたら襲名に際して、これを書いてくださったんです。
― おお。いいですね。
ね、いいでしょう。
― 最後に、これを読んでいるお客さんに一言お願いします。
今年の秋から、9月21日から、二代目古今亭志ん五になります。
9月21日からは、真打昇進披露興行が行われます。鈴本演芸場、新宿末廣亭、浅草演芸ホール、池袋演芸場、国立演芸場の順で全17回、寄席のトリを務める一世一代の興行です。全17回、毎回違うネタで高座を務める予定です。ほぼ古典ネタをやるつもりですが、短い新作ネタも加えると、いまの僕の持ちネタから20くらいはお披露目することになると思います。みなさん、楽しみに何度でもお越しください。
真打昇進はゴールではなく、スタート地点に立ったにすぎません。今後さらに精進いたします。引き続き、ご贔屓お引立ての程、よろしくお願いいたします。
※編集部注)披露興行の日程は、このページの最後でご案内しております。
=編集部感想=
インタビューさせていただいた翌日。ご自身のブログには「本心を覗かれるような気がして恥ずかしいからインタビューは苦手なんですが、昨夜2時間半かけて、じっくりご質問にお答えしてきました。」と書いてくれた志ん八さん。
そういえば「恥ずかしい」「なんて答えたらよいかわからない」「基本、なにも考えてない男なんですよ」なんておっしゃってました。でも決して何も考えてないことなんかなく、私たちは人を楽しませる職業人特有の照れなんだと思って聞いてました。
基本、感謝の人で「ありがたいことです」を連発なさっていました。そりゃ、運も引き寄せますよね。
驚いたのは物まねが上手いこと。ほんとにお上手。志ん橋師匠はもちろん、志ん輔師匠、さん若さん、志ん五師匠の出待ちの時に会ったA師匠(仮名)。どの方のも、特徴をよくつかんでいて、似ていて、落語ファンならゲラゲラ笑うはずです。人や世の中に対する観察眼、観察耳(そんな言い方があるなら)が鋭いんだと思いました。眉毛を動かす初代譲りの“まゆ芸”も、ぜひ今後取り入れてほしいと切に願います。
記事にはしませんでしたが、こんなエピソードも。
志ん八さんが、ある小さな会の高座に上がった時のこと。会場の空気が考えられないほどピンと張り詰めていたんだそうです。そんな空気を感じたそうです。あとから聞いたらお客さん同士の小競り合いがあったのだそうで。「そういうのを考えるより先に、感じちゃうんですよね」と志ん八さん。
ネタの覚え方も「(昔はノートに書いてましたがそれは止めて、今は)聞いて覚える」とのことでしたので、やはり視覚、聴覚が優れているのでしょう。全体的に、優れた落語家が持つ、センサーがどれも発達しているのだと思いました。
「志ん八さんが思う、一流の落語家とは?」という質問には
「お客さんを選ばない人。どんなお客さんでも満足して帰らせる人。それが一流かなと。お客さんを置いてけぼりにしない人。」と答えてくださいました。
目の前の人を幸せな気持ちにさせる落語家、古今亭志ん八。
ほんわか・にこやか・ハッピーなオーラが半端ないです。
ギラギラも、キリキリも、ピリピリも、一切身にまとっていない落語家。
そんな八が、五へと階段を登ります。
9月から志ん五、二代目・志ん五。
落語を聞いて、ニコニコゲラゲラ 幸せになりたければ、志ん八さん。おすすめです。
(インタビュー&撮影:2017年5月吉日)
取材・構成・文:三浦琢揚(株式会社ミウラ・リ・デザイン)
志ん八改メ 二代目古今亭志ん五 真打昇進襲名披露興行
鈴本演芸場 夜の部
9月24日(日)/9月26日(火)/9月29日(金)
新宿末広亭 夜の部
10月2日(月)/10月5日(木)/10月7日(土)
浅草演芸ホール 昼の部
10月12日(木)/10月15日(日)/10月17日(火)/10月20日(金)
池袋演芸場 昼の部
10月21日(土)/10月23日(月)/10月27日(金)
国立演芸場 昼の部
11月1日(水)/11月4日(土)/11月6日(月)/11月9日(木)
上記、披露興行チケットをご購入いただいた方には「二代目古今亭志ん五特製オリジナルステッカー」のプレゼント付き!(でめきん/たい/まぐろの全三種類。画像は、でめきんです。イラストは「ちろ」さんの作品)。興行チケットをお求めの方は、こちら、志ん八さん宛てにメールでご連絡をお願いいたします。
一生に一度の真打昇進襲名披露興行。初代志ん五に教わった最後のネタ「錦の袈裟」はどの日に飛び出すのか。くがらく編集部も今から予定を組んで観覧予定です。みなさんも、ぜひ。
〔追伸〕
志ん八「いま、「出目金飼育係」と言う僕の応援部がありまして(後ろ幕を作るなどに対して)協賛していただいた方には、この出目金ステッカー(写真参照)を差し上げているんです。どうぞよろしく。」
チラシ掲載の文章は、インタビュー記録からの抜粋です。全文は、ここでしか読めません。ぜひ、読んで感じて知ってください。志ん八さんの素顔。そして本音。
古今亭志ん八 独占インタビュー(5)