誰か私を見つけて!見出して!そしてマネジメントしてください!
― いまでも確実に売れていらっしゃいますが、笑二さん的には、まだ不満足なのだと思います。“圧倒的に売れた!”とは、どんなときに、そう感じると思いますか。
うーん、どんなときでしょうか。談笑、談春師匠、志の輔師匠とか、定期的に1000人キャパの落語会を成功し続けられる。という感じでしょうか。すごいことですから。
― 売れるためには、どうすればよいと思っていますか?
頭がよくないので、そこは考えられないんですよね。面白い落語を覚えて、いただいた仕事・高座を務めるということ位しかできないんです。よく、酔っ払った吉笑兄さんに言われるのが「今のお前の実力で、もし俺がマネジメントしてたら、相当稼ぐように(お前を働かせることが)できる。ただし折半な。その条件でどうや!?」って(苦笑)。
いつも「誰か私を見つけて!(私の才能を)見出して!そしてマネジメントして!」と思っています(笑)。他力本願ですね。でも、こちらとしては、いつ何時、そういう人が現れてもいいように、そういうオファーがきてもいいように、常に芸を磨いておきたいなと。そんな心境です。
セルフマネジメントできないといけないのかもしれませんが、なかなか…。師匠も、吉笑兄さんもセルフプロデュースできる人。私は、どこかの事務所にマネジメントしてもらうほうが合っているのかもしれません。
照れくさいから、恥ずかしいからでしょうか、自分からは能動的には動かないのが私です(苦笑)。人と仲良くなるのも、まず先に相手から。自分からは告白もアプローチもしないという。
独演会のキャパを毎月300まで上げたい。
― 高座とは別人のようですね(笑)。これから考えていることはありますか。仕掛けやビジョン、覚えたいネタ、やろうと思っていることなど。
いま毎月、上野広小路で独演会(※)をやっています。それを続けてどんどんネタ数を増やして、独演会のキャパを毎月300(300人のお客さん収容)まで上げたいんです。これが当面の目標です。それができないと立川流では真打に上げてもらえないだろうなと。
師匠のステップアップが、まさにそうでした。広小路(80席)⇒日本橋(120席)⇒国立(300席)と。私は、広小路、日本橋の次は内幸町ですね。そして最後に国立級の300キャパに持っていきたいと思っています。
― これを読んでいるお客さんに一言お願いします。
26歳になって、はじめての高座(※)になります。26年間培ってきたものを披露したいと思います。ぜひ、楽しみにおいでください。
※ 毎月、上野広小路で独演会:「立川笑二月例独演会」のこと。毎月開催。常に1作はネタおろしに挑戦している。(来年の会場はどこになるのでしょうか)
※ くがらく当日(11月26日)は笑二さんの、なんと誕生日だったのです!
=編集部まとめ=
覚悟のある人は、かっこいい。
笑二さんはとても強い覚悟をもって落語家をしている。
「売れなければ破門」という談笑師匠のお達しは、前座の時ほど強くは感じないそうですが、人が落ちるのは簡単です。現状に満足し、手を抜きはじめれば、驚くほど簡単に興行主・主催者に呼ばれなくなるわけで、そうなっていない(引っ張りだこ)なのは、それだけ精進しているからです。本当にかっこいい。
途中、「笑二さんの持ち味、特長。ご自身ではなんだと感じていますか」と聞いたとき、笑二さんの答えは
見た目でしょうか。これは生んでくれた親に感謝しています。見た目だけで(お、こいつ、なんだかおもしろそう)って思っていただけるはずだと。芸人としては得ですよね。小4のときから坊主頭です。
でした。談笑師匠も「笑二にはフラがある」とおっしゃっています。見た目もおもしろそうだし、(楽しい落語をやってくれそう)な雰囲気を身にまとっています。
ただ、天性のモノ(才能)だけではなく覚悟もあります。その覚悟が膨大な稽古量を産み出し、それが自信に変わり、テクニック(How to)になったり、落語家としてのより強烈な雰囲気(生きざま)をつくりだしているのでしょう。
落語界には『稽古が仕事、高座は集金。』という名言があります。橘家文左衛門師匠(平成28年秋、9月下席より三代目 橘家文蔵を襲名することが決定)の言葉だと言われています。
『稽古が仕事、高座は集金。』
この金言に従えば、まさに笑二さんは毎日10時間の仕事をして、高座で集金をしている職業人(個人事業主)。仕事として考えれば毎日10時間の仕事は、まぁ、理解できます。労働基準法の労働時間の原則は1日8時間ですけども(苦笑)
にしてもです。にしても、すごい稽古量です。誰に指示されているわけでもなく、誰にも見張られているわけでもなく、毎日黙々と稽古を重ねている。プロの噺家さんにとっては、驚くようなことではないのかも?とも思いましたが、談笑師匠が褒めているのですから、同業者に比べても相当多い稽古量なことは間違いありません。
談笑師匠は、こうもおっしゃっています。
落語家は、誰も見ていないところで稽古を積む地味な稼業でもあります。この作業は前座だけでなくこの先ずっと続くのです。地道にやるべきことを自律的にできないのなら、まず落語家に向いていない。あるいは、とことん頑張っていてもそれが成果となって表れないのであれば、それもまた落語家としてはたぶん向いていない。
日経スタイル「放任主義で育てた弟子たちの通信簿」より、一部抜粋
シンプルだけども相当過酷な“縛り(「売れなければ破門」)”がある談笑一門において、自分をここまで律して日々コントロール(=稽古)し続けているというのは、「破門されたくないからいやだ!」などという後ろ向きな理由だけでは不可能な離れ業です。落語が大好きで、落語家という職業・商売が大好きでなければ到底不可能です。
天性の持ちモノ(落語愛だとかセンスだとかフラだとか)に加えて、猛烈な覚悟と稽古。まさに鬼に金棒、笑二に稽古です。
鬼です。オニ凄いです。オニ落語家です。(※)
笑二さんは落語の申し子でもあり、まさに落語の鬼です。にこにこ笑顔の鬼。
今はまだかわいらしい笑顔の子鬼ですが、この子鬼。いつか、落語界をしょって立つ大鬼になる。そんな気がしています。
お忙しい合間を縫って、たくさんの質問に答えて頂き、本当にありがとうございました。
※ 「オニ(鬼)/鬼のように」:程度が甚だしいさま、勢いのすさまじい様子などを意味する表現。「鬼のように強い」「鬼のように難しい」「オニかわいい」「オニすげえ」などのように用いられる。
(インタビュー&撮影:2016年8月吉日)
取材・構成・文:三浦琢揚(株式会社ミウラ・リ・デザイン)
チラシ掲載の文章は、インタビュー記録からの抜粋です。全文は、ここでしか読めません。ぜひ、読んで感じて知ってください。笑二さんの素顔。そして本音。
立川笑二 独占インタビュー(6)