桃月庵黒酒

初見歓迎。ここから知ってほしい、

まだ進化の途中。

― 2027年8月で10周年かと思うんですけども入門から。

らしいですね(笑)

― そこまでに何か考えてらっしゃることとか、それまでに…みたいなことは?

いろいろ考えて戦略的に動いている、と思ってもらっているようなんですけど、実はそうでもなくて、結構行き当たりばったりで。目の前の会に追われて、「この会があるからこの噺を、この会があるからこの噺を」という感じで追われて生きています。毎年、年始に目標を立てたり、いまは毎月、大まかな目標を立てるんですけど全然うまくいってなくて…。

― そうですか?割とクリアされているんじゃないですか目標は

自分ではそうではないですね。(これまで)体調が悪かったのもありますけど、今年で言えば。あんまり、これこれ、こういうことしようって思っていても、そのとき面白い方に行ってしまっていたから…。

10周年というよりは40歳で、ちょうど10周年であり40歳になる節目なので。なんかそろそろ…。ずっと言っているんですけど、そろそろどうするか道を決めた方がいいんだろうなって思いますね。その…人情噺や怪談噺といったものを売り(特徴・個性)にしていくのか、それとも全部できますよっていう風に進んで行くのか。

いまの時代、偏っていた方(尖がっている方)が目立ちますから。「もう、ここの道を進んでいれば間違いないだろう」みたいな道はちゃんと見つけないとダメなんだろうなと思っています。その一環として、雲助師匠がやはり連続物(※)を手がけていますから、一回そこに挑戦しておきたいなと思いますね。

― 連続物で言うと、例えば圓朝物とかそういうのですか?

はい。「お富与三郎」だったり「双蝶々(※)」だったり。その辺やってみて、どうなるかなって思っていますけど。なんか一言で表現できるキャッチフレーズみたいなのがつくような、わかりやすい噺家にならないとな、っていうことですね。なんかまだあれもこれも興味のある方いっちゃう。それもいいこともあれば悪いこともあるでしょうし。その四十になる年に時代がどうなっているか分かりませんけれども。

※ 連続物:『怪談牡丹灯籠』や、『塩原多助一代記』、『真景累ケ淵』、『名人長二』など

※ 双蝶々(ふたつちょうちょう):代表的な連続物の一つ。人を殺して逃げてしまった息子と、息子の犯した罪のため住まいを転々とした父親の、別れと再会を描いた人情噺

― どっちの方面に行ってもOKそうなところは黒酒さんの強みじゃないですか「僕はここしかないんですよ」っていう感じは全然ないじゃないですか

まあまあまあ。ただ、そうですね。使う側の人(主催者側・席亭側)が難しいんでしょうね。やっぱり滑稽噺を一生懸命やっている人、滑稽の人っていうわかりやすい人の方が使いやすいというのがありますよね。これは、自分が使う側として考えたんですけど、尖っている方が刺さりやすいんじゃないですけど今の時代は。

― 例えば尖っているっていうことで言うと、雲助師匠の一門で言うと、龍玉師匠でしたらピカレスク方面にまっしぐらな印象。もちろん、幅広く根多はおやりになるとしても、客側のイメージとしてはピカレスク、因果・怪談噺など

そうですね。うちの師匠だったら滑稽、馬石師匠だったら“ふら(※)”があるとか。そういう分かりやすい。まだ私はそこまで行けてない。気持ちとしては全部できた方がいいなって思っているんですけど。そうもいかない気持ちで…分かんないですよね

※ ふら:芸人独特の何ともいえぬおかしみ。言葉では説明できない天性のユーモアのセンスや、人を惹きつける雰囲気・オーラ

― 少し早いんですけど今年を振り返ってみていただけますか

桃月庵黒酒

今年はなんもうまくいってない。でも一番変わった年でもあります。体調も良くなったし、発声も変えたし。二つ目になって3年経つわけですから。変わった年かなとは思います。去年はただ噺を増やしていただけだし。考えると改善の年じゃないですか。なんかいろいろね、悪かったところを直していた年だなって思いますね。

― 二つ目に昇進してまだ3年目、とは思えません。技量というか、その落ち着き。「貫禄があるとはよく言われます」とも書いていらしたし、ご自分でも遅めの入門だとは思っていらっしゃるかもしれませんけど、それでも「もう3年でここまで!すごい!」と思う方もいっぱいいらっしゃると思うんですけど、そのあたり、ご自分では?

まあ、そう思ってくれている方はありがたいですけど、大概の人は何も考えずに見るんで、こんな貫禄のある人が出てきたらもう何十年もやっているのかなと思うから、あんまり関係ないじゃないですかね。言われることに関しては、うーん、ありがたいのかな、ありがたいってことにしていますけど、ただ言ってもまだ3年ですから。

貫禄と技術、貫禄あるのに下手だなって思われる可能性もあるわけで。技術が追いついてないみたいな。「師匠」って呼ばれることもありますから。あの師匠はあんまり上手くないみたいな。だから二つ目っぽい工夫もなかなかね、やりたいですけど。貫禄と合わないかなとかっていう目線も入ってくるようになりましたよね。

― 黒酒さんなりの目標、その高みが、すっと上にあるので、まだ満足されないのかもしれませんけど、純粋にすごいなと思うんですよね

ありがとうございます

― 高座で手応えはないんですか?ありますよね?

ええ、ありますよ。あるときもありますし、でも悔やむ方が多いから「黒酒ぶつくさ」っていう(ホームページのコラム)のは、言い訳がちゃんとできる場所っていう風にしてる感じですかね。うまくいってなかったときに、これこれこうだからうまくいってなかったなって思わせるっていう役割だったりもしますから(笑)。雲助師匠は「雲助ぶつくさ」を、そういう風には使ってなかったでしょうけど。合法的な言い訳の場所みたいな風に使ってますかね。

― 雲助師匠はある程度のところでホームページを更新しなくなりましたけど、黒酒さんの中ではどうですか?ずっと続けていきたいですか?

いつかやめるときが来るだろうなとか感じつつも、雲助師匠のホームページは稼働はしていますからね。あのホームページ。正月になったら正月のトップページになったり。掲示板は閉じちゃいましたけど、ずっとファンの方と交流していたりするんで。「黒酒の元帳」というタイトルでやっていますので、真打ちになったらさすがに二つ目みたいに、さらけ出しながらやっているのはちょっと違うなって思うところもありますし。「ぶつくさ」は形を変えて、そんな言い訳の場所にはしないと思いますけど、続けるかも。ちゃんと真打らしく変えていこうと思うんです。もしかしたらいま公開している分は全員消しちゃうか非公開にするかとかするかもしれませんけど。

― 好きな言葉とか頼まれた色紙にお書きになる一言とかありますか?

色紙に書いているのは『黒酒は百薬の長』って書いていますね。あとは、雲助師匠が昔、色紙に書いていた『噺中没我』。勝手に真似しています(笑)。師匠は「これはなんて読むんですか?」ってたびたび聞かれて困るから、もう書くのはやめたらしいです。

桃月庵黒酒

― 最後に、くがらくにおいでになるお客様にメッセージをいただけますか?

多分、私のことを知らない人が多いんだろうなと思うので、その日をきっかけに私のことを知ってもらいたいですよね。くがらくさんに限らず、常々、この瞬間だけ見てもらって判断するのではなく、その先も見てもらいたいなと思っています。こちらは、まだ変化の途中ですので、これから知っていってもらえれば、のきっかけになればいいかなと思います。よろしくお願いします。

インタビューを終えて

桃月庵黒酒

白酒師匠に憧れ、大師匠・雲助師匠にも稽古を。学び続ける黒酒さん。

高座では「やんま久次」や「死神」など、胸が熱くなったり背筋が伸びたりする噺もあれば、肩の力が抜けて大笑いする可笑しみもある――その振れ幅が黒酒さんの魅力の一部です。

取材していて強く感じたのは、黒酒さんが“いまこの瞬間”だけで判断されるのではなく、これからの変化も含めて知ってもらいたいと願っていることです。だからこそ、noteやX、Instagramなどで日々の言葉を届け、出会いの入口を丁寧に増やしている。

「芸は人なり」を磨く途中のいまを、ぜひ、くがらくで。そして“その日(5月23日)”が、黒酒さんを十分に知るきっかけになりますように。

(インタビュー&撮影:2025年10月吉日)

取材・構成・文:三浦琢揚
株式会社ミウラ・リ・デザイン


チラシ掲載の文章は、インタビュー記録からの抜粋です。全文は、ここでしか読めません。ぜひ、読んで感じて知ってください。黒酒さんの本音、素顔。そして落語観。

桃月庵黒酒 独占インタビュー(1)

桃月庵黒酒 独占インタビュー(2)

桃月庵黒酒 独占インタビュー(3)

桃月庵黒酒 独占インタビュー(4)

桃月庵黒酒 独占インタビュー(5)

桃月庵黒酒 独占インタビュー(6)